税務・会計情報

配偶者控除の見直し

政府税制調査会は9月9日、専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」を見直す検討に着手したと伝えられました。安倍首相は具体化に向けた議論を指示し、政府税制調査会は11月をめどに見解を取りまとめる方向です。今まで何度も廃止が検討されてきましたがいよいよ現実的に廃止となるようです。

 配偶者控除が何度となく廃止の検討がされてきた背景には、「女性の就労促進」があげられます。女性が就業調整を意識せずに働くことができるようにするなど、現代の多様な働き方に中立的な仕組みをつくっていく必要があるとの理由から、安倍政権の重要課題である「働き方改革」をめざし、いわゆる「103万の壁」に阻まれていた女性の就労促進を目指します。

 配偶者控除が導入された経緯は、妻は家庭内にとどまり育児に専念するという考え方に基づき今から50年以上も前の税制改正により導入されました。導入当時の状況と現代の状況は明らかに異なるため、現代の夫婦の働き方に見合うように改正が行われることとなります。配偶者控除は、妻の給与収入が103万円以下なら夫の課税所得から38万円を差し引く仕組みです。対象となる世帯は専業主婦世帯が多く、専業主婦世帯を優遇する税制は女性の社会進出を阻み、経済成長を阻害していると言われています。

また、専業主婦世帯は統計的に富裕世帯が多いと言われているため、富裕世帯を税制で優遇することは所得再分配機能を有していないと考える向きもあるようですが、ある調査では、子育てに専念せざるを得ない状況で専業主婦世帯となっているために、貧困世帯の割合が高いとも言われています。専業主婦世帯には富裕層と貧困層の二極化が進んでいるともいえます。

 廃止が検討されている配偶者控除に変わって、夫婦であれば収入にかかわらず夫の税額から一定額を差し引く「夫婦控除」の導入が有力視されています。財源確保のため、夫の年収が一定額以上の世帯は夫婦控除の対象から外すなどの検討がされるようですが、現状の配偶者控除の利用に所得制限をつけて、高所得層に対する増税ととらえられても仕方がないようにも見えます。財源の確保=単なる増税とならないよう、本来の目的である女性の就労促進につながることを期待します。

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