個別労働紛争解決制度施行状況
平成28年6月8日に「平成27年度 個別労働紛争解決制度施行状況」が厚生労働省より発表されました。
「個別労働紛争解決制度」とは個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や早期解決を支援する制度で、総合労働相談所を入り口として2つの方法があります。
総合労働相談
都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など381ヶ所(平成27年4月1日現在)にあらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応。ここで下記の2つの解決制度にわかれる。
①助言・指導
総合労働相談で対応後、必要に応じ民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進。
②あっせん
総合労働相談で対応後、必要に応じ紛争当事者の間に弁護士や大学教授などの労働問題の専門家である紛争調整委員が入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る。
平成27年度の状況の主なポイントとしては、
①総合労働相談、助言、指導、あっせんの件数がいずれも前年度と比べ減少。
②総合労働相談件数は8年連続で100万件を超え、高止まりしている。
③民事上の個別労働紛争の相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が66,566件と4年連続で最多であり、27年度の全体数に対し27.1%とダントツ。
④助言・指導は1ヶ月以内に99.1%、あっせんは2ヶ月以内に90.1%と迅速に処理。
となっています。
もう少し細かく見ていく中で、気になったことがあります。総合労働相談、助言、指導、あっせんのいずれも申出人は正社員が最多です。比較的立場が弱く、待遇も劣ることが多い非正規社員ではなく、正社員が申し出ているということは、それだけ会社に対する不満が高いということの表れではないかと考えます。人材不足といわれていますが、問題社員の場合を除き、社員をむやみに解雇や退職に追い込まず、労使が協力し自らモチベ-ションが高まる仕組みをつくったり、職場環境をよりよいものに改善していくことが必要でしょう。
個別労働紛争解決制度は裁判になる前の最後の砦です。一番良いのはトラブルを防止することです。社会保険労務士は、トラブル予防に力を入れています。トラブルになる前に、何ができるか一緒に考えていきましょう。