税務・会計情報

インボイス方式

インボイス方式

 消費税複数税率制について、前回の税務・会計情報でご紹介していますが、これに関連して今回は「インボイス」についてご紹介致します。
 2015年12月2日に、自民党は、事業者の納税額を正確に把握するため、税率や税額を記載する請求書「インボイス」を2021年度から導入する方向で公明党と調整を進める方針を固めることを発表し、2015年12月3日には、自民党と公明党が、制度案で合意したと報道されました。
 2015年12月11日には、平成28年度税制改正法案において2021年4月にインボイス制度を導入することが決定しました。

 この「インボイス」とは何でしょうか?
 財務省のHPに下記のように記載されています。
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「インボイス方式」は、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式。
① 課税事業者は「インボイス」の発行が義務付けられており、また、自ら発行した「インボイス」の副本の保存が義務付けられている。
② 「インボイス」に適用税率・税額の記載が義務付けられている。
③ 免税事業者は「インボイス」を発行できない。したがって、免税事業者からの仕入れについて仕入税額控除ができない。
(注)「インボイス」とは、適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類。欧州においては、免税事業者と区別するため、課税事業者に固有の番号を付与してその記載も義務付けている。
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 インボイスとは、添付の図(出典:財務省)の右のように販売者が購入者へ発行する伝票で、販売数量、単価、適用税率、税額、合計金額などが明記されたもののことです。
 軽減税率の導入で、2以上の消費税率が適用されるようになると、どの商品にいくらの消費税が係るのかを把握するために、「インボイス方式」を取る必要が出てきます。

<インボイス方式のメリット>
① 異なる税率ごとに税額が明示されているので、正確な税額転嫁及び仕入税額控除の計算が可能となります。

② 免税事業者はインボイスを発行できないこととされており、免税事業者は消費税を請求できません。この結果、免税事業者がこれまで売上に対して徴収し溜めていた「益税」の発生を避けることができ、消費者が負担した消費税が、適切に漏れなく国に納められることになります。

 ②については、下記に補足説明をしておきます。重要なポイントは、インボイスを発行出来るのは課税事業者だけで、免税事業者は「インボイス」を発行できないという仕組みにあります。 下記に簡単な例をご紹介します。

課税事業者から商品仕入(インボイス有り)
商品仕入 10,800円(消費税:800円)
商品売上 21,600円(消費税:1,600円)
1,600円-800円=800円(納付税額)

免税事業者からの商品仕入(インボイス無し)
商品仕入 10,800円(インボイス無し→消費税:0円)
商品売上 21,600円(消費税:1,600円)
1,600円-0円=1,600円(納付税額)

 インボイス方式では、同じ商品を購入しても取引相手が課税事業者と免税事業者で異なります。したがって、現状では免税事業者も消費税を課すことができますが、インボイス方式が導入された場合には、免税事業者は消費税を徴収することができなくなり、消費者が負担した消費税が、適切に国に納められることとなります。

<インボイス方式のデメリット>
① 事務負担が増大します。A商品は消費税率10%、B商品は消費税率5%というようにインボイスに記載する又は記載されている税率を常に確認する作業が必要となります。
② インボイスの発行や保存の社内体制を整備したり、経理システムを新しくしたりするなど資金的な負担が生じます。

 また、税額計算の仕方についてもこれまでとは異なり、インボイスに記載された数字を集計するという作業になると思われます。

 2021年度からの導入であるため、まだこれから様々なことが検討されると思われますので、今後も注目していく必要があると思います。

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