消費税複数税率制について
12月に入り、各顧問先の忘年会に出席させていただく機会が増えてきました。冒頭の挨拶でよく話題になるのが、「今年も本当にあっと言う間に過ぎてしまい・・・」ということですが、個人的にも本当に早く過ぎていく気がしてなりません。今年1年どんなことをやってきたか振り返ると様々なことが思い出されますが、逆に、やらなければならなかったことも数多く思い出されます。残り数日になりましたが、年内の処理を依頼されている仕事もありますので忘年会に参加しすぎて本当に忘れてしまうことのないようにしたいと思っております。
さて、今日は最近話題の消費税複数税率に関する雑感です。
そもそも消費税の複数税率は何のために導入するものなのでしょうか?それは消費税には「逆進性」があるからだと言われています。逆進性とは、ざっくりいうと、現在の所得の対比で消費税負担率を見た場合、所得の高い人(担税力の高い人)よりも所得の低い人(担税力の低い人)の消費税負担率が低くなるというものです。つまり、お金持ちより低所得者の方が消費税負担率が高いから何とかしようというものです。
そこで目を付けたのが、欧米でも導入されている複数税率制です。食料品等を始めとする生活必需品の税率を低くし、逆進性を少しでも緩和するための施策です。逆進性でいえば、社会保険料も一定所得以上では逆進性があるわけですし、必ずしも消費税に限ったことではありません。
今、議論は、軽減税率の有効性を前提に、生鮮食品をどうする、加工食品をどうするといった議論がなされています。欧米では逆進性の解消に軽減税率があまり効果がないといった研究もなされているようです。効果があるかどうかはわかりませんが、いずれにしても、どこで軽減税率の線引きをするか非常に難しいと思いますし、また、業界の軽減税率を求めるような政治的圧力がないとも言えません。
また、別の対策として、マイナンバーを利用した還付制度の導入や、給付付き税額控除の導入も検討されています。財務省が提案したマイナンバーを利用した還付については、手続きが煩雑なことや運用コストが高いことなどの批判を集め、給付付き税額控除についても「所得の把握や執行面での課題がある」との安倍首相の答弁です。
日本税理士会では、かねてより、税制改正建議書において単一税率制度を維持すべきことを強く主張しています。それは、対象品目の公平な選定や区分経理の方法が困難であること、事業者の事務負担が増加すること、低所得者対策としては非効率であること、財政再建が損なわれ社会保障給付の抑制が必要となること、簡易課税制度が複雑な制度となってしまうこと等の観点からです。
複数税率の導入は、「公平・中立・簡素で、かつ広く薄くという消費税の長所」を後退させます。その結果、特に中小・小規模事業者は、今まで以上に複雑な事務処理を要することになり、過度なコスト負担も強いられることになります。(日本税理士会連合会)
いずれにしても、消費税の増税及び逆進性への対応は国民生活に重大な影響を与えることは間違いありません。制度の導入は慎重に行っていただきたいものです。