税務・会計情報

配偶者への居住用不動産の贈与

 相続税の基礎控除が6割になった平成27年の改正以後、贈与税の配偶者控除の相談が多くなりました。
 以前でしたら『奥さんが相続するのでしたら、相続税はほぼゼロですからわざわざ一部を贈与すると登録免許税や登記報酬の分だけ余分じゃないですか?』などと申しておりましたが、相続財産の総額を下げるためには効果ありますので、今更ながらおススメしております。


贈与税の配偶者控除の特例は
 ①同一世代間の贈与であること
 ②贈与の認識が概して希薄であること
 ③夫の死亡後の妻の生活保障の意図で行われること
…などの理由から、課税価格から2,000万円を配偶者控除として控除することができます。

1.適用要件
(1) 婚姻期間が20年以上(婚姻の届出をした日から贈与の日までの期間)の配偶者からの贈与であること。
(2) 居住用不動産(居住用の土地・借地権,家屋,マンション)又は居住用不動産の購入のための金銭の贈与であること。
(3) 前年以前に同じ配偶者から,この特例を受けていないこと。
(4) 居住用不動産は,贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住して、かつ、その後も居住する見込みであること。
(5) 居住用不動産の購入のための金銭の場合は,その金銭の贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産の取得に充て、その取得した居住用不動産に3月15日までに居住して、かつ、その後も居住する見込みであること。
(6) この特例は贈与税がゼロであっても、配偶者控除の適用を受ける旨及びその控除額の明細書を記載した贈与税の申告書に、その控除を受けようとする年の前年以前の各年分の贈与税につき適用を受けていない旨の記載があり、かつ、婚姻期間が20年以上である旨を証する書類等所定の書類を添付して提出すること。
贈与税の課税価格-配偶者控除額(最高2,000万円)-基礎控除額(110万円)= 贈与税の課税される金額


(※)登記をするために必要な書類
① 贈与者の実印
② 贈与者の印鑑証明書
③ 不動産の権利証又は登記識別情報
④ 贈与者の住民票(取得した住宅用家屋の所在場所が受贈者の住所と同じであれば,住民票は必要ありません。)
⑤ 受贈者の認印
⑥ 受贈者の住民票


(※)特例の適用を受けるために必要な書類
① 贈与税申告書(第1表)
② 贈与者との婚姻期間等を証明する書類(財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された受贈者の戸籍の謄本又は抄本)
③ 受贈者の戸籍の附票の写し
④ 居住用不動産を取得したことを証明する書類(居住用不動産の登記事項証明書(登記簿謄本))
⑤ 居住用不動産を居住の用に供していることを証明する書類(居住用不動産を居住の用に供した日以後に作成された受贈者の住民票)
(注)  取得した住宅用家屋の所在場所が,戸籍の附票の写しに記載されている受贈者の住所と同じであれば,住民票は必要ありません。

(1) 金銭より居住用不動産(現物)の贈与が有利  
 贈与税の配偶者控除の対象となる財産は、居住用不動産購入のための金銭か、又は、居住用不動産(土地,建物,マンションなど)そのもの(現物)とされています。
 金銭を贈与した場合、その金額が相続税評価額となり贈与税の計算がされます。これに対し、居住用不動産は対象物が土地であれば路線価評価額(倍率地域は固定資産税評価額×倍率)建物であれば、固定資産税評価額を基に贈与税が計算されます。
 通常の場合、路線価評価額や固定資産税評価額は取引時価より低額となります。したがって、一般的には金銭贈与より、居住用不動産を現物で贈与する方が有利になります。
 なお、居住用不動産の贈与には登記の際の登録免許税と登記費用及び不動産取得税が必要になるので、この点も留意する必要があります。

(2) 居住用不動産の持分贈与も検討
 夫の単独名義である居住用不動産の持分を妻に贈与することも検討に値します。
 居住用不動産の相続税評価額のうち2,000万円部分(基礎控除の110万円と合わせれば最高2,110万円)までは贈与税ゼロで贈与できます。この場合、建物等は価値が劣化するので土地等を中心に贈与する場合が多いと思われます。しかし、将来共有名義となった居住用不動産を譲渡して居住用財産の特例措置を活用する可能性もあるため、建物にも妻の名義を入れておくことが望ましいといえます。
 なお、居住用不動産の持分贈与にも登録免許税と登記費用及び不動産取得税が必要になります。

2.相続税の生前贈与加算との関係
 「相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格の加算の規定」を適用する場合において,その加算する財産が贈与税の配偶者控除の適用を受けたものであるときは、配偶者控除相当額は相続税の課税価格の加算からは除外されますので、効果は絶大です。

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