「女性活躍推進案」成立の見通し
企業や自治体に女性の登用目標の設定を義務付ける「女性活躍推進案」が衆議院本会議で全会一致で可決されました。自民、公明、民主の3党による修正で、企業が女性登用の行動計画で定めた目標を達成するよう努力義務規定を新たに盛り込み、参院に送付され、今国会で成立する見通しです。
法案は昨秋の臨時国会に提出されましたが、衆院解散で廃案になっていました。国と自治体、民間企業に女性の採用比率や女性の管理職比率などのうちから、いずれかで独自の目標設定を義務付け、情報の公開方針などを含めた行動計画をつくるよう定めています。
今回はこの法案に関して経営者が知っておくべきことをまとめてみます。
この法律の要旨は、企業の「女性活躍の見える化」です。同法では、従業員301人以上の企業に対して、事業行動計画の作成と公表を義務づけます。(300人以下は努力義務)301人以上の企業は約1万5000社ほどあるといわれています。多くの企業にとって行動計画の作成は「自分ごと」になります。
行動計画策定のためには自社の状況把握と課題の分析が重要となります。状況を把握するための必須項目は、女性採用比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、女性管理職比率です。厚労省によると「各社の共通の課題となりうるものを上げている。女性を採用しているか、男性と比べて女性だけが辞めてないか、長時間労働になっていないか、女性が管理職として登用されているか。必須4項目で状況を把握し自社の課題を分析したうえで、課題に即した行動計画を策定していただきたい」とコメントしています。
行動計画の必須項目は、(1)目標(数値目標)、(2)取組内容、(3)実施期間、(4)計画期間となります。策定した行動計画は、行政機関(各労働局)に届け、さらに企業のWebサイトなどの外部に公表することが義務付けられています。法案が成立すると、平成28.年4月1日から施行されます。
そのことは知っていても、その日までに策定した行動計画の届出を公表が終わっていなければいけないということを知らない人は多いのではないでしょうか。つまり、あと8ヶ月の間に、301人以上の企業はみな、それを求められることになります。まさに「女性活躍、待ったなし」の状態です。
この法律には罰則規定がないので、実効性を危ぶむ声も一方ではありますが、利害関係者(従業員、株主等)に「見える化」という仕組みそのものが、いい動機づけになるように思います。
女性活躍を見える化することで、先進企業は、女子学生が就職先として選んでもらえるようになります。また、投資家が投資先を選ぶときに優位にもなります。そういう市場原理そのものが女性活躍推進のインセンティブになるのではないでしょうか。子育て支援の取り組みを認定する「くるみん」制度のような、女性活躍企業の認定制度の導入も予定されているようです。