新しい事業承継税制
平成27年1月1日より相続税の改正が行われたことは、数多く開催された相続税セミナーや弊社HPでも既報のとおりです。特に、地価の高い首都圏にお住まいの方は今後の対策を準備する必要を認識していただいたものと思います。
また、相続税の対象が不動産である一般の方々にとってはなじみの少ないものではありますが、事業者にとって、不動産と同様に、分割・納税に苦労するものとして同族株式が挙げられます。この同族株式については、上場株式と異なり流動性が極めて低いことや、会社の経営権に係る重要な要素であることから、相続の対象となる際には慎重な検討が必要とされています。
これら同族株式については、担税力がありながらも換金することの困難性などから自宅と同様に、相続税評価における評価減の措置を行っています。いわゆる「事業承継税制」と呼ばれるものです。中小企業の円滑な事業承継を通じ、事業の継続的な発展、安定した雇用の創出及び地域経済の活力化等を狙い平成21年度税制改正で導入されましたが、各要件の厳しさや手続きの煩雑さ等により、その利用は限られたものでしかなく当初の目的を達成するには程遠いものでした。
平成25年度税制改正により、この平成27年1月からより利用しやすい様下記の改正が行われました。
【制度の概要】
後継者である相続人等が先代経営者から会社の株式を相続又は贈与により承継する際、納付すべき相続税又は贈与税の軽減(相続税80%、贈与税100%)を行う制度です。
【改正内容】
① 事前確認の廃止(平成25年4月からの先行改正)
当該制度を利用する為には経済産業大臣の認定が必要ですが、その認定を受けるための「経済産業大臣の確認」制度が廃止されました。
→対象者が亡くなった後でも(相続開始後8か月以内であれば経済産業大臣の認定をとることができます。)手続きをとることができるようになりました。
② 後継者の要件のうち親族要件の廃止
後継者である相続人は、被相続人の親族であることが要件となっていましたが、後継者である相続人の要件として、代表権の有無や株式保有要件は変わりませんが、親族要件が廃止されました。
→適任者を親族外からも選択できるようになりました。
③ 雇用8割維持要件の緩和
従前は雇用の8割を「5年間毎年維持」することが要件でしたが、一時的に8割を下回っても、「5年間平均維持」していれば、納税猶予が継続することになりました。
→景気等の外部要因に左右される可能性が減少しました。
その他利子税の負担との改正もあり、改正前より大幅に利用しやすくなったように思われます。自宅とともに評価が高くなりがちであり、かつ、納税資金を確保するには大変な同族株式です。相続をきっかけに事業基盤が揺るがないよう準備をしていきたいところです。
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