税務・会計情報

「金(地金)」売却益(譲渡所得)

 年の後半を向かえ、会計事務所では繁忙期を過ぎ、通常期に入っています。
 全体の仕事を見直し、効率的に業務を進めたいと考えている「税理士 中嶋昌啓」が、今回の担当です。

 唐突ですが、皆さん「金(地金)」をお持ちですか?
 ここ数年、金相場が高騰しており、「売り時」と言われています。
 先日、私の自宅にも、「金をお持ちでないですか?」と「貴金属の買取業者」が来ました。「100gは持ってるけど」と言ったところ「現物を見せてもらえませんか」ときたので、「売る気はないから」とお引き取り願いました。
 この業者は違うとは思いますが、相場より安い値段で買い取るなどの悪徳業者にはお気お付けください。(新聞やネット等で相場を確認することをお勧めします。)

 ところで本題ですが、「金」を売却して利益が出る(売った値段>買った値段)と所得税等が掛かることをご存知でしょうか?
 
では、初めに「金売却益」の「所得税のしくみ」についてご説明いたします。
 
 「金(地金)」を売却して所得(利益)が出た場合は、原則として「譲渡所得(総合課税)」の対象となります。
 課税対象になる「譲渡所得(総合課税)」の所得金額は、次のように計算します。
 1 取得の日から、5年以内に譲渡した場合(短期譲渡)
  ① 売却価額-(取得価額+売却費用)=譲渡益
  ②(「金(地金)」の譲渡益)+(「金(地金)」以外の譲渡益)-50万円

 2 取得の日から、5年超で譲渡した場合(長期譲渡)
   長期譲渡の場合、上記(短期譲渡)の①、②で算出した金額の「1/2」

   ※1「短期譲渡」と「長期譲渡」は、各々計算し、両方ある場合の50万円控除(譲渡所得の特別控除)は両方合わせて50万円が限度ですので、まず、「「短期譲渡」から先に控除し残額があれば「長期譲渡」から控除します。

   ※2 税額については、「総合課税」のため、他の給与、事業所得等と合算して算出するので、合算後の所得によって異なります。

   ※3 所得税のほかに、復興特別所得税、住民税もかかります。

 最後に、重要なことを一つ。

 以前、顧問先の所得税の税務調査で問題になったのが、「取得価額」です。
 買った時の領収証等があれば、全然問題ない話ですが、個人で買った時の領収証等の保存は、あまり気にしていないことが多いのではないでしょうか?
 「買った値段が分からない」場合の「取得価額」は、「売却額の5%」しか認められません。
 現在の業者等から見た買取価額は、約4,600円(1グラム)ですので、取得価額は230円(4,600×5%)として、譲渡所得の金額を算出することになります。

 例)1キログラムの金(地金)を4,600,000円で売却したが、購入金額が不明の場合
   (他の譲渡所得はなし)
  4,600,000円 -(4,600,000円×5%)= 4,370,000円
  4,370,000円 - 500,000 = 3,870,000円・・・譲渡所得(総合課税)の金額

昭和50年以降で最も値下がりしたのが、平成11~12年当時ですが、それでも約1,000円でしたので、上記「例」」のように、230円しか認められないとすると、実際はそれほど利益が出ていないのに、税金を多く払わなければならないことが生じます。

まだ、売却する予定はない方も、「取得価額」を証明する、「領収証等」があるか、確認しておいた方がよいでしょう。
ない場合は、購入先に確認するなど、証明できるものを、できるだけ取り寄せてください。

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