老人ホームに入居する親族にかかる相続と扶養控除
身近な事柄からお伝えしようとしている税務・会計情報ですが、身近なこと・興味あることというのは偏りが生じるもので既にお伝えしていたというのも数多くあります。
平成26年1月1日以後の相続から相続開始の直前に被相続人が要介護認定を受けていれば、老人ホームに入所したことで空き家となった家屋の宅地等でも小規模宅地特例の適用対象(敷地の相続税評価額が80%減額される)となることは以前の税務・会計情報「老人ホーム等への入居」(H25年8月)でお伝えした通りです。
今回はその補足とともに所得税の扶養控除についても解説させて頂きます。
これまでは被相続人が介護を受けるために老人ホームに入所するなど、一定の事由を満たす場合には特例の対象として取り扱われていましたが(国税庁質疑応答事例「老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」)25年度改正で“介護を受けるための入所”が“相続開始の直前において要介護認定を受けていたこと”という法令上の要件として規定されました( 措法69の4① 、 措令40の2 ②一)。
対象者が死亡した後に要介護認定が下りた場合でも相続開始直前に認定を受けていたものとして適用対象として認められますが、市町村による要介護状態であるか否かの調査を受ける前に死亡してしまった場合は認定を受けることができないことになるので注意が必要です。
この場合、たとえ相続開始直前において被相続人が事実上要介護認定を受けられるような状態にあったとしても、要介護認定を受けていない以上特例の適用対象にはなりません。
上記相続税法上の注意点だけでなく、所得税の扶養控除についても参考までに記載します。
控除対象扶養親族のうち同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより所得者等と別居している場合であっても同居に該当しますので、1年以上といった長期入院の場合にも同居に該当します。ただし、老人ホームなどへ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえませんので別居する扶養親族となり扶養控除額に10万円の差が生じます。
感覚的には老人ホームに関しては相続税と所得税が相反状態にあると思えるかもしれません。