譲渡所得税の申告
毎年、7月に土地に関する相続税や贈与税の算定基準となる路線価が公表されています。昨年7月公表の路線価では、全国平均変動率△1.8%と5年連続で前年より下がっているものの、一昨年の下落率△2.8%から下落率が縮小し、一部地域では上昇に転じるなど土地価格の下げ止まりが顕著になってきています。
路線価は実際の取引価額とは若干のかい離があるものの、一定の連動性があると考えられますので、路線価が上昇に転じるようになれば、土地取引が活発になるものと思われます。土地取引によって生じた利益又は損失は、確定申告により申告を必要とする場合が多く、また、特例が多いのが特徴です。今回は、これら譲渡所得の申告の概要とよく使われる特例を取り上げたいと思います。
1 譲渡所得の計算
譲渡所得は、次のように計算します。
収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
取得費・・・売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費
譲渡費用・・仲介手数料、印紙、貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料等売るために直接かかった費用
特別控除・・収用等により土地や建物を譲渡した時 5,000万円
居住用財産を譲渡した時 3,000万円 など
2 税額の計算
土地や建物の譲渡による所得は、他の所得、例えば給与所得などと合計せず、分離して課税する分離課税制度が採用されており、所得税の額は次のように計算します。なお、長期又は短期の区分は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物の譲渡を長期、5年以下のものを短期としています。
長期譲渡所得
課税長期譲渡所得金額×15% (別に地方税5%及び復興特別所得税)
短期譲渡所得
課税短期譲渡所得金額×30% (別に地方税9%及び復興特別所得税)
3 主な特例
個人が、土地又は建物を譲渡して長期譲渡所得又は短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、その損失の金額を他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。
しかし、下記のような特例が適用される場合には、他の所得との損益通算等を受けることができます。
・マイホームを売ったときの特例
→マイホームを売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
・特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
→住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの債務残高を下回る価額で売却して損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡による損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除することができます。
・マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
→新たにマイホームを購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡による損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除することができます。
譲渡所得の申告には、数多くの特例があります。各特例の要求する一定の要件を満たした上で申告をすることによりメリットを受けられることがありますので、適用漏れのないようにご注意ください。