相続税の調査
平成27年1月1日より相続税の改正が行われ、基礎控除が従前の6割に低下したことはご存知の方が多いことと思います。改正当時、相続税の申告率が4%程度だったものが倍以上になると試算されていました。確かに、2年弱が経過し弊社での申告件数だけを見ても試算どおりもしくはそれ以上の申告率になっているような気がします。
相続税の申告の増加に伴い、結果として相続税調査の件数も増えている気がします。相続税調査の非違率(申告誤りの率)は80%を超えています。相続税の調査時に必ずと言っていいほど指摘される点にもかかわらず、納税者がそれほど意識していない点についてあげていきたいと思います。
・被相続人の生前の預金の動きについて
相続税調査において100%確認される事項は、被相続人と相続人をはじめとする親族の預金口座の動きではないでしょうか。申告書においては、相続発生時の預金残高しか記載されませんが、税務署は様々な資料によって被相続人の預金残高がおよそどれくらいであるはずなのか資料を集めています。年々の所得税確定申告や、財産債務調書その他様々な調書が提出されています。
さらに、税務署の職権によって金融機関の取引を確認することができますので、大きな入出金などはどういったルートで入金されているのか、どこへ出金されているのか等確認することができます。その際、納税者にしてみると、家族なんだからと、ある種当たり前なのですが、税務の観点では贈与と受け止められるような現預金の動きを行うことがあります。
土地の購入、車の購入など名義があるものはもちろんのこと、名義がないようなものでも本来負担すべき人が負担をせず、誰かに負担をしてもらう(例えば親等)といったことは、贈与税の申告が必要になることがあります。
さらに、おじいちゃんおばあちゃんが孫のためにと孫名義の預金通帳を作成していることも数多く見受けられます。こういった他人名義の預金については、相続税または贈与税の申告が必要になることがありますのでお気を付けください。
・生命保険契約の契約者と保険料負担者について
上記に関連しますが、保険契約は、保険料の負担者、契約者、被保険者、受取人の4人が存在しています。保険料の負担者と受取人の関係はよく問題になるところで、それぞれ所得税、贈与税、相続税のいずれかがかかることになります。
それ以外に、保険の契約者は妻や子だけど保険料負担は夫や親がするというケースも散見されます。この場合、本来の保険料負担者は契約者である妻や子であるため、夫や親からの贈与税がかかることがあります。納税者本人はそんな意識がなくても財産の移転がある以上は気を付けるべき点です。
・貸金庫の存在について
相続税の申告は、被相続人の財産に対して行いますが、実際申告をする人は相続人です。したがって、同居をしていた場合はある程度資産の状況を把握することができるかもしれませんが、同居をしていなかった場合には、どの金融機関と取引があったのかなど知ることさえ大変なことです。
ましてや貸金庫の存在など知る由もありませんが、貸金庫利用料は預金通帳から出金があることが多いので、通帳を確認すると貸金庫を借りていたことは把握することができるかもしれません。税務調査で指摘されることも多いですが、調査がない場合には貸金庫にある財産に気づかないこともあるかもしれません。思わぬお宝があるかもしれませんので思い当たる方はご確認ください。