改正・労働基準法(審議中)
現在国会で審議されている労働基準法の改正案の中でも、中小企業への影響が大きいと思われる2点について解説してまいります。
1.中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、その時間外労働に対して通常賃金の25%増しによる割増賃金の支給が必要ですが、時間外労働が月60時間を超えた場合には、60時間を超えた部分に対し50%以上の割増賃金を支給することが求められています。(労基法37条)
同制度はこれまで中小企業は免除されていましたが、改正案が可決されると中小企業への免除措置が廃止となります。
改正案の施行時期は平成31年4月とされており、施行まで3年間の猶予がありますが、将来の施行開始を見据えて、社内の残業時間の現状を把握し、業務の平準化や残業の事前申請などのルール化及び徹底など、残業削減の対策を今から進めていくことが求められます。
2.一定日数の年次有給休暇の確実な取得
年次有給休暇が年10日以上付与されている労働者に対しては、年間5日の有給取得を会社に義務付ける制度です。
この改正案は平成28年4月に施行開始が予定されており、実務において注意して頂きたいポイントは次の2つです。
(1)正社員に限らない
パートやアルバイトであっても、年10日以上有給休暇が付与されていれば取得義務化の対象となります。
(2)年間5日を既に取得していれば義務は発生しない
既に労働者全体で取得日数が年間5日を超えている場合は、取得義務は発生しませんが、取得率が低い会社は取得義務への対応が必要となります。
例えば、労働者が自ら2日の有給休暇しか取得していない場合は、年間5日に満たない3日を会社は取得させる義務を負うことになります。
日本は世界の中でも有給休暇の取得率が低いといわれており、長時間労働による労働者の健康への影響も懸念されています。労働者の心身のリフレッシュに有給休暇の積極的取得は大事なことです。
一方では現場で混乱が生じないよう、未取得者への取得を連続休暇とするか、2ヵ月に1日ずつ指定するか等、どのように有給休暇を取得させるかを練る必要があります。
また、5日以上の確実な取得に向け管理簿等を整える必要もあります。
今回解説をした改正案は、いずれも労使双方に影響が出てまいります。
労働者から質問がある可能性も考えられますので、自社で取り得る方針を検討し、体制、ルール作りを予め進めるようにしましょう。