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解雇「金銭的解決制度」議論開始

 政府が導入を目指す解雇の「金銭解決制度」について、厚生労働省の検討会が先月29日、議論を始めました。裁判では不当解雇とされた場合、会社が働き手にお金を払えば退職させられる制度で、政府や経済界の宿願です。しかし、労働組合は強い警戒感を示しています。

 制度化されれば解雇解決金の水準が示されます。現状では、仮に従業員が会社側と最高裁まで争って勝訴することができれば、判決確定までの賃金の支払いが会社側に命じられます。最高裁までいけば約3.年という長い時間はかかりますが、3年分の賃金を勝ち取ることができます。解雇無効判決→賃金支払→職場復帰の流れですが、大半の労働者は勝訴後和解退職します。
 この制度をすでに導入しているスウェ-デン(勤続5年未満→月給6ヶ月分など)のように、制度化されると解決金の水準が低めに設定され、従業員にとっては現状よりも少ない金額と引き換えに解雇されることになります。
 
 しかしながら世の中の不当解雇と言われる解雇案件のうち、多くは行政のあっせんや調停によって低水準の解決金で解決されており、ごく少数だけが裁判まで進んで徹底抗戦を行い、そして圧倒的大多数の労働者は具体的行動さえ起こさずに泣き寝入りしているのが現状です。
 
 そもそも大企業と中小企業では全く状況が異なる現実があります。

 大企業であれば解雇以前の退職勧奨の段階で賃金の1年分~2年分などの高い水準の金額が提示されることもよくありますし、従業員もまた金銭的に余裕がある人が比較的多く、本腰を入れて個別労働紛争に乗り出す確率も高いでしょう。労働審判、民事訴訟へと進めば2年分、3年分などの解決金額になる可能性も確かにあり得る訳です。
 ところが中小企業の場合、解決金が賃金の2~3ヶ月分などというのはよくある話であり、行政のあっせんや調停のレベルでは賃金の1ヶ月分の解決金が提示されることも珍しくありません。それ以前にすぐに次の職を見つけないと生活が成り立たず、結果の見えない紛争を始める余裕はないという労働者が大半であり、会社側と最高裁まで争って勝訴すればという状況がいかに非現実的な夢物語なのかというところです。このような現状を踏まえれば、例えば解決金が賃金の6ヶ月分という水準を法制度によって確実に補償されることになれば、一概に労働者にとって損だと一刀両断に言い切れるものでのありません。

 結論を言えば、金銭解決ル-ルの法制化は、大企業の労働者にとっては解決金水準が現在よりおそらく下がることになり、逆に中小企業の労働者にとっては解決金水準が上がるうえ、法制度によって最低限の解決金が担保され泣き寝入りするケ-スが大幅に減少する可能性があるように思われます。
 解雇無効の場合は現職復帰が原則とはいえ、あっせんや調停、労働審判などで労働者が職場復帰を強く望んでいかない限り、その多くが事実上和解によって金銭的解決をしているのが現状です。解雇を正当化するつもりはありませんが、大企業と中小企業の労働者の不公平がなくなるのであれば、この「金銭的解決制度」の導入する価値はあるのではないかと考えています。

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