相続税の調査事績
今月1日、国税庁より平成27年分路線価が発表されました。全国平均では7年連続して下落したものの下落幅は小さくなり、東京都を中心とした首都圏や、他の大都市圏では前年に続き上昇し、上昇幅が拡大している地域も見受けられ、中には10%を超える上昇を見せる地域もありました。今年1月より改正相続税法が施行され、基礎控除の縮小など相続税が課税される方が増加する予定ですが、今回発表された路線価をみてもその傾向はますます強くなりそうです。
7月の税務署の定期異動が終わり、弊事務所にも法人税、相続税の調査着手の連絡を頂いております。数多くの申告を請け負っている以上、年数件の調査はやむを得ないわけです。申告の誤りを意図しないのは当然ではありますが、それでも誤りを指摘されるのは嫌なものです。納税者が緊張するのは当然と言えば当然かもしれませんが、我々担当税理士も少なからず緊張しているものです。
税務署は、毎年調査事績を公表しています。例えば相続税では、12,000件程度の調査を行っておりますが、相続税の申告書は年50,000件程度が提出されていますので、申告した納税者5人に1人程度は調査を受ける結果となっています。その中で実際申告内容に誤りがあったため修正申告を要した件数は、10,000件程度となっています。これを非違率と言っていますが、実に80%超です。先ほど書きましたように納税者だけでなく我々税理士も少なからず緊張する理由はここにあります。調査があるとその規模の大小はありますが、修正を要することが多いわけです。
さらに、国税庁からは査察の着手処理件数も発表されています。査察は主に、法人税及び所得税を扱っておりその割合は8割に上りますが、相続税を対象にした調査も行われており、平成26年度には2件の事案が処理されました。たった2件かもしれませんが約5億円の脱税が摘発されています。査察1件当たりの脱税額が1億円程度なので、相続税における脱税額の大きさがうかがえます。
路線価の上昇、基礎控除の縮小等により、相続税申告件数が増えることは明らかであり、当然、申告件数が増加すれば調査件数も増加するものと思います。相続税の場合、対象者が亡くなった後、対象者本人ではない相続人が申告を行う点に、正しい申告を行えない難しさはあると思いますが、調査時に指摘を受けると本来の納税義務よりも重い負担を背負わなければいけません。当初より正しい申告を心がけ適切な納税をすることが大切だと思います。
【関連リンク】 平成25事務年度における相続税の調査の状況についてはこちら