財産債務調書の整備
平成27年1月に相続税法の改正がスタートして約半年が経ちました。人が亡くなることはそれだけで辛く寂しいものではありますが、相続税がかかる人にとっては、改正前後ともなると更なる辛さを味わうものかもしれません。
基礎控除の削減や税率の変化など増税方向の改正が目につきますが、小規模宅地の拡充等減税方向の改正も多くありました。また、相続の発生後の対応ばかりでなく、相続の発生以前に被相続人の財産内容等を大まかに把握する方法として、「財産債務明細書」というものがあります。確定申告をされている方にとっては多少馴染みのあるものかもしれませんが、ご自身の持つ財産内容を税務署に報告してくださいというものです。この提出は所得税法232条により義務付けられているものですが、明確な罰則規定がないため、該当する方でも提出をされていない方もいらっしゃるかもしれません。
これより先に「国外財産調書」という文書の提出が義務付けられています。こちらは導入の際、提出しない納税者に対する罰則と提出する納税者に対するメリットを明らかにしました。提出しなかった場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。一方、正しく提出した場合には、所得税及び相続税に申告漏れが生じた場合でも、当該国外財産に係るものの場合には過少申告加算税が5%軽減されることとなります。
馴染みのない国外財産の報告が義務付けられ、罰則・メリットが明確になっているのに、以前からある財産債務明細書にはそのような規定がないことがむしろ不思議な感じがしましたが、平成28年1月からの提出については、「財産債務調書」として国外財産調書と同様の扱いになります。
【財産債務明細書の見直し】
所得税・相続税の申告の適正性を確保するため、既存の財産債務明細書を見直し、財産財務調書として整備します。
【提出基準】
「所得2千万円超」かつ「総資産3億円以上または有価証券等1億円以上」
【記載金額】
記載時点の時価(見積額も可)
【提出によるインセンティブ措置】
所得税及び相続税の申告漏れが発見された場合、
・財産債務調書に記載がある部分については、過少申告加算税の5%軽減
・財産債務調書の不提出又は記載不備に係る部分については、過少申告加算税の5%重課
提出するとメリットがあるというのは、提出事務付けからすると違和感がありますが、そうしたインセンティブを入れないとなかなか提出されない=インセンティブを入れてでも提出を促すことによって、その後の資料として役立てたいという表れなのかもしれません。いずれにしても、相続が発生した時点で正しく遺産を把握・管理し、適正な申告を行いたいものです。