税務・会計情報

2次相続を踏まえた相続対策

 相続対策といっても多種多様です。
 昨今は相続税対策と争続対策の二つに分かれるといわれており、相続税対策は①生前移転対策 ②評価引き下げ対策 ③納税資金の確保対策に区分されます。争続対策はただただ遺産分割に限ります。
 今回はこの遺産分割について一考。

【2次相続は負担増】
 男女の平均寿命の違いもあり一般的に、夫が先に亡くなり、後で妻が亡くなるということが多いようです。その夫が亡くなったときのことを1次相続、妻が亡くなったときのことを2次相続と言います。1次相続での配偶者の取得割合をいかにすべきか悩むところではないでしょうか。
 前年まで相続税の基礎控除は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」でした。これが2015年の相続より、6割の「3000万円+600万円×法定相続人の数」となりました。2次相続では法定相続人が1人減りますので、控除額が600万円減ってしまいます。また相続税額計算においても、法定相続人が法定相続分で取得したものとした金額に、それぞれ超過累進税率を乗じて計算し、それを合算して相続税の総額を算出します。従って、相続財産が同額の場合、法定相続人の数が1人減れば税率が上がってしまいます。

 2次相続では配偶者がいないので配偶者軽減の適用はできません。配偶者軽減とは、配偶者の取得した財産が法定相続分又は1億6000万円のどちらか多い方までなら、配偶者には相続税がかからないというものです。

【評価額の引き下げは困難】
 2次相続では評価額についても大きな変化が生じます。
 2次相続での相続人は、夫婦ではないので同居をしているケースが極めて少なくなります。同居等を要件とする小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅であれば、330㎡まで80%減額という大きな減額があります。これは、330㎡までの自宅なら20%しか課税財産とされないということです。
 この特例の適用を受けるには、一定の親族が自宅の敷地を取得する必要があります。1次相続で配偶者が取得すれば、もちろん適用が受けられます。しかし、例えば2次相続で別居の子(持ち家あり)が取得する場合には、適用が受けられません。これにより、課税価格が大幅に増えてしまいます。
 以上のことから2次相続の税負担は大きくなっていきます。

【一時払い終身保険の活用】
 夫に対しては終身保険に加入していたが、妻の場合は申し訳程度の保険のみといったケースもあるかと思われます。
 「500万円×法定相続人の数」までの死亡保険金については非課税とされます。現在の保険加入状況を確認のうえ、90歳まで可能な保険が保険各社でありますので一時払いとする終身保険を検討してもよいかもしれません。
 相続対策で終身保険に加入した後、生活費や医療費で予想外に出費がかさむこともありますが解約返戻金の9割まで貸付に応じる保険も多いようです。


 「父さんの遺産は全部母さんに相続してもらおう、二人で築き上げたものだから」とお考えになるかと存じますが、2次相続を考慮した分割もご検討頂きたい… 
 「あっ、意外に母さんへそくり多かったのね」なんてこともあったりして。

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