税務・会計情報

激化するふるさと納税

先月31日、平成27年度税制改正法案が成立・公布されました。以前に発表されている税制改正大綱が順調に法案化されたようです。その中で、以前弊社ホームページでも記載したことがありますが、ふるさと納税についてです。
今回の税制改正により、住民税控除額が従来の税額の1割から2割に上限が引き上げられました。さらに、一定の条件を満たせば、確定申告不要といった制度も出来上がっております。つまり、政府は、今後もこのふるさと納税を拡大させていく方向に舵を切ったわけです。

そもそもこのふるさと納税は、地方に生まれ、教育・就職と都市部で生活する人が多い中で、都市部に集中する税額を、地方=ふるさとにも配分してもいいのではないかという発想から平成20年に生まれたものです。そして、このふるさと納税には、3つの大きな意義があります。
① 納税者の選択
② ふるさと(地方)の繁栄
③ 自治意識の進化=自治体間競争の刺激 です。
納税者の選択により納税先を決定することにより納税意識を高め、また、寄付を受ける各自治体は、人口減少著しい中で財源を確保することにより繁栄を目指す。さらに、各自治体の魅力や寄付金の使途等を公表し、より多くの寄付を受けようと努力をする。これが、ふるさと納税の当初の目的でした。

ここでいう「ふるさと」は、納税者が選択したところを「ふるさと」とすると規定されていますので、好きな自治体を選んで寄付をしていくことになります。そこで話題となるのが、寄付を受けた自治体からの返礼品です。すべての自治体から公表されているのかはわかりませんが、昨年度の寄付額上位だった長崎県平戸市は、うちわエビ等の海産物の返礼品が人気で、10億円を超える寄付を集めたようです。平戸市によると、昨年度の個人・法人市民税額が約10億円とのことなので、ふるさと納税により同額規模の寄付金が集まったことになります。

さて、3月6日の衆議院予算員会で高市早苗総務大臣が激化する返礼品競争の鎮静化を促すとの報道がありました。「異常だと思う高額な返礼品について、節度ある対応を各自治体に通知する」ということのようです。確かに、ある市では、1000万円以上の寄付に対して、750万円相当の土地を返礼するといったものまで現れました。(さすがにこれは総務省の指摘で取りやめになったようです。)

現状、インターネット上では、どこの自治体が何をいくら分くれるかといった情報が氾濫しています。納税者は、その自治体がどこにあるのか等詳細を知らなくても、もらえるものから判断して寄付をしていくことが多いように思われます。この行為は、当初の3つの意義のいずれも満たしているわけですから批判される行為ではないと思いますが、やはり、総務大臣の言う「異常だと思う高額な返礼品」については一定の線引きが必要だと思います。

平成25年度には約130億円まで増え、導入当初から2倍にまで増えています。今後も今改正を踏まえ拡大していくことが見込まれますが、芽生え始めた寄付の文化がしぼんでしまう危険性もあると思いますので、どのような線引きをするか注目です。

ちなみに、返礼品でもらったものは所得税法上「一時所得」に該当します。高額な返礼品をもらった場合には申告が必要となることがありますのでご注意を。

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