退職金の源泉徴収
早いもので10月も中旬になりましたが、あと半月「スーパークールビズ」を活用させていただきたいと思っています「税理士 中嶋昌啓」が担当をいたします。
退職金を支払う際は、所得税額等を計算し、源泉徴収等をしなければなりません。
今回は、形式的な事項(作成書類等)の注意点と、具体的な計算例を記載いたします。
1 作成書類等
(1) 退職所得の受給に関する申告書
この書類は、給与の支給を受ける際に給与の支払者に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と同質の書類で、この「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合は、所得税(復興特別所得税を含む・・・以下「所得税」)については「退職所得控除額(後述)」の計算はせず、「支給額に対して20%」の金額を源泉徴収することになります。
なお、住民税については「退職所得申告書(「退職所得の受給に関する申告書」と一体の用紙)」の提出がない場合も、同様の税率(後述)です。
(2) 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
法人(人格のない社団等を含みます。)の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、相談役、顧問等)に対して退職手当等支払った場合には、3部作成し、1部を受給者本人、1部を税務署に、1部を受給者のその年の1月1日の住所地の市町村に作成します。
提出期限は、「退職後1月以内」になります。なお、税務署には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の提出期限の翌年1月31日までに提出すればよいことになっています。
(3) 源泉所得税等の納付
源泉徴収された税額は、翌月10日(納期の特例等の承認を受けている場合はその期限)までに、所定の納付書等で納付します(期限後に納付した場合等は、「不納付加算税」等の付帯税が賦課されることがあります。
2 退職所得控除額の計算等
(1) 退職所得控除額
次の①、②)の合計額が「退職所得控除額」になります。
① 20年以下の期間…40万円×勤続年数(80万円に満たないときは、80万円)
② 20年を超える期間…70万円×勤続年数
なお、勤続年数に1年未満の端数があるときは、「切上げ」て計算します。
『例』勤続年数「40年1月」⇒「41年」
また、「職務上、職務外の傷病により障害者になった」ことに「直接基因」して退職する場合には、上記により計算された金額に100万円を加算した金額が、退職所得控除額になります。
(2) 具体的な計算例
従業員として入社したのち、同社の役員(使用人兼務)になり、その後退職した
役員昇任時に、従業員分の退職金の支給有り
従業員期間20年
役員期間 10年(今回支給)
この場合の「退職所得控除額」の計算は、「今回の退職金の支給額の計算の基礎とする期間」に、「従業員期間」を「含めて計算している」か「含めていない」かにより、「退職所得控除額」が異なります。
① 「含めている場合」・・・700万円
計算式
(A)勤続期間30年…40万円×20年+70万円×10年=1,500万円
(B)従業員期間20年…40万円×20年=800万円
退職所得控除額…(A)-(B)=700万円
② 「含めていない場合」・・・400万円
計算式
役員期間10年・・・40万円×10年=400万円
3 税額の計算等
(1) 退職所得の額の計算
① (退職金の額-退職所得控除額)×1/2…「1,000円未満」切捨て
※ 法人役員等の勤続期間が「5年以下」の場合は、役員部分に係る退職金については、上記算式の「1/2」ができなくなりました(平成25年分から)ので注意してください。
「法人役員等」とは
一 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者(法人税法第2条
第15号に規定する役員)
ニ 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
三 国家公務員及び地方公務員
(2) 税額の計算
① 所得税(復興特別所得税を含む)
退職所得の額×所得税率(累進課税)
② 住民税
道府県民税(都民税)・・・退職所得の額×4%(100円未満切捨て)
市町村民税(特別区民税)・・・退職所得の額×6%(100円未満切捨て)
※ 納税は、道府県民税と市町村民税の合計額を、受給者のその年の1月1日の住所地の市町村に行うことになります。
最後になりますが、退職金の税額計算等は、過去に退職金を受けていたり、2か所以上(中退共等を含む)から退職金を受けた場合は、勤続年数の計算及び税額の計算が異なる場合がありますので、個々に確認して計算してください。
【関連リンク】 退職所得の源泉徴収事務はこちら