「貸倒損失」の計上について
暑さも和らいで、過ごしやすい日が多くなりましたが、今年は(も?)豪雨での被害が多くありました。
まだ、台風等による災害も考えられますので、避難路等については、日ごろから意識していきたいと思っています、「税理士 中嶋昌啓」が今回の担当をいたします。
「貸倒損失」・・・景気が低迷している昨今、ただでさえ厳しい経営状態の中での「貸倒」、資金繰り等の計算にも影響し、大変な思いをした方も多いと思います。
追い打ちをかけるようですが、「税務調査」では、「貸倒損失」があると、少額なものを除いて、ほとんど個別に貸倒までの経緯等を確認されます。
この際は、「貸倒損失」に至るまでの、取引時の状況(帳簿、書類等)、入金が遅滞してからの接触状況(書類、記録等)、最終的に「貸倒損失」を計上した経緯、根拠等を説明することになります。
「税務調査」で、計上不当として修正申告を求められる点は、主なもので3点あります。
① 「貸倒損失」ではなく、「寄付金」該当
② 手続き不備等により計上できない
③ 計上すべき時期を逸している
①の例としては、支払能力のある債務者に対して、債権放棄等をした場合等があります。
法令の規定による整理手続を債務者がしない場合等では、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続」等が貸倒処理の要件となっていますので、「債権放棄通知書」を送れば全て「貸倒損失」の計上ができるわけではありません。
税務上の処理・・・「寄付金」の損金算入限度額の計算をし、限度額を超える金額が損金不算入となります。
②の例としては、債務者が「債務超過の状態が相当期間継続」している事実が分かったとしても、経営は続けており、債務者の帳簿上、債権者に対する買掛金、未払金等の計上がある場合等があります。
また、時効消滅の期間が到来しただけでは、「貸倒損失」の計上ができない場合があります。
税務上の処理・・・「貸倒損失」の損金算入が認められず、「売掛金」等の科目に戻します(貸倒損失計上前に戻す)。
③の例としては、「貸倒損失」として計上すべき決算期に計上しないで、税務上の更正期間の時効後の決算期に「貸倒損失」計上をした場合。
税務上の処理・・・損金不算入として、別表四で加算(その他流出)
いずれにしても、「貸倒」という損害を受けた上に、その金額を損金計上するのに、「努力」が必要という、ジレンマはありますが、「貸倒損失」を計上する場合、個々の債務者ごとに、計上時期、証拠書類等を十分検討し、税務調査時に説明できることを前提に計上することをお勧めします。
【関連リンク】 法人税基本通達(9-6-1~3)はこちら