税務・会計情報

日本の財政

 政府は、法人実効税率を平成27年度から段階的に引き下げ、数年間で20%台にする方針を固め、「骨太の方針」に明記することを決めたという報道がありました。骨太の方針とは、経済財政諮問会議がまとめる「経済財政運営の基本方針」のことです。来年度の予算案作成前の6月に閣議決定されます。また、骨太の方針には、法人実効税率の引下げによる税収減を補うため、恒久的な財源を確保することも明記されるようです。具体的な財源については、今後検討され、年末の税制改正大綱に織り込む予定のようですが、調整は難航が予想されています。

 我が国の税収は、国税・地方税を合わせ約90兆円です。その内訳は、法人税約20%、所得税約30%、消費課税35%、資産課税15%となっています。つまり、法人実効税率が下がれば当然法人税収は下がります。ここ数年の歳出推移はほぼ横ばいとなっていますが、基本的に大きく減少することがないため、法人税収が下がれば、必然的に、他の税収でその不足額を賄う必要があります。

 ここ数年の税制改正の主なものは、消費税率の引き上げ、相続税における基礎控除の引き下げ及び最高税率の引き上げ、給与所得控除の上限設定等が行われてきました。また、平成27年10月には、消費税10%への引き上げも予定されています。つまり、法人実効税率を引き下げたことによる税収不足分の補てんは、基本的には、個人への課税の強化で賄うことになりそうです。

 各国の法人実効税率は、日本35%、アメリカ40%、ドイツ30%、イギリス24%等となっており、国際競争力の観点からも法人実効税率を引き下げることが望まれてきました。また、各国の消費税率は、主要国が軒並み20%程度に対して、日本だけが5%と低率となっていました。したがって、法人実効税率の引き下げと消費税率の引き上げは、1つのセットとなっており、切り離して議論することができません。政府は、消費税の引き上げによる各世帯への負担は、法人実効税率を引き下げたことにより生まれる企業の収益から給与として各世帯へ転嫁されることを予定しているようですが、果たしてそうなるのでしょうか。

 各国の税収が、法人課税ではなく、個人を対象にした所得税及び消費課税が主となっているのに対し、日本は法人減税が実行されてもなお、他国に比べ法人税収の比率が高くなっていることは事実です。つまり、今後も、所得税及び消費税を中心に相続税も含めて個人に対する課税が強化されていくことになりそうです。

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