外れ馬券は経費
会計事務所の繁忙期の1つ、法人事業者の3月決算(5月申告)がいよいよ終わりに近づいてきました。いわゆる「アベノミクス」で景気回復の兆しが言われておりますが、実体経済、特に中小企業者はまだまだ景気回復の実感を得られないのではないでしょうか。そんな時代にあっても、大変有難いことに、今年も昨年以上に忙しい時期を迎えることができました。これからもクライアントの信頼に応えるべく職員一丸となって努力していかなければならないと思っております。
さて、ニュースでも話題となっておりましたが、先日、競馬の払戻金に対する課税を巡って争いとなっていた事件に判決がでました。
「外れ馬券は経費」
所得税の課税は、所得の内容によりその計算が異なります。所得税基本通達34-1「一時所得の例示」の中に「競馬の馬券の払戻金」と記載があり、今まで所得税法では、競馬の払戻金を「一時所得」と考えていたわけです。
「一時所得」に該当する所得に対する課税は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を控除し、さらに特別控除額(最高50万円)を控除した額の2分の1に相当する額を他の所得と合算して税額を算出することになっています。
したがって、今までの考え方からすると、総収入金額=当たり馬券の払戻金であり、収入を得るために支出した金額=当たり馬券の購入費であったわけですから、外れ馬券は税金計算上控除できませんでした。今回の裁判のケースだと、この計算の仕方で算出した税額は5億7千万!巨額の脱税事件だったわけです。
今回の裁判で、「外れ馬券は経費」となったのは、上記の税金の計算方法を変えたわけではなく、所得の考え方に例外を認めたということになるのでしょうか。つまり、趣味・娯楽の世界ではなく、利益を追求して、反復・継続的に馬券を買い続けていることがその履歴から明らかである(購入回数及び金額等)等極めて特殊なケースにおいては、競馬の払戻金は一時所得ではなく、「雑所得」(経費となる金額は、当たり馬券の購入費+外れ馬券の購入費となる)と考えられるということですね。
税の基本的な考え方に「簡素」というものがあります。馬券を購入する際、通常、総購入額と総払戻額を考えて購入する方がほとんどではないでしょうか。一点勝負ということもあるかと思いますが、購入する馬券の中には外れるものが複数出ることを予定して組み合わせで購入されるものだと思います。であるならば、当たり馬券の購入費+外れ馬券の購入費を経費とし、税額を計算する方が、いたってシンプルで「簡素」な気がします。
ただし、おそらく今回の判決が予定しているのは極めて特殊なケースであり、一般的な馬券の購入の場合は今まで通り「一時所得」となります。計算上、申告が必要となる方はくれぐれも申告漏れとならないように注意をしてください。。