改正・労働契約法
第12回目は「社会保険労務士 大城雄大」が担当致します。改正・労働法の第2回目は、労働契約法です。8月10日に公布され、一部は公布と同時に既に施行されている状況です。法改正の内容は大きく分けて以下の1から3となります。
1.無期労働契約への転換
2.雇止め法理の法定化
3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
このうち2については8月10日に施行されています。1と3については公布日から1年以内に施行される予定です。最も大きな改正点であります1.無期労働契約への転換について行政通達に基づいてポイントをまとめてみます。
1.無期労働契約への転換
有期雇用契約が通算5年間を超えて反復更新された場合には、有期契約労働者が使用者に対し申込みを行うことによって期間の定めのない契約(無期労働契約)へと転換することになります。
ポイント①
通算5年超え有期労働者が申し込んだときは使用者は承諾したものとみなされ、有期契約満了の翌日から労務が提供される無期契約が成立することになります。
つまり、労働者が申込権を行使した後、使用者が現に締結している有期労働契約の満了をもって労働者との契約関係を終了させようとする場合、すでに無期契約は成立していますから、無期雇用の解雇に該当することになり、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には権利を濫用したものとして無効になります。
また、満了日よりも更に前に契約関係を終わらせようとする場合は、契約期間中の解雇ということになり、通常の解雇よりも厳しい要件が求められるため十分に注意が必要です。
ポイント②
無期転換の申込権の発生を回避するために一時的に直接雇用からはずし、請負や派遣の形態を偽造した場合は脱法行為をみなされ、同一の使用者との労働契約が継続しているものとみなされます。
ポイント③
労働者が申込権を行使できるタイミングは、通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約の契約期間の初日から満了日までです。仮にその期間に申込権が行使されなかったときは、再度契約が更新されれば新たにまた申込権が発生し、更新後の満了日まで行使が可能となります。
ポイント④
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件にするなど、権利発生前にあらかじめ有期契約に同意をとって申込権を放棄させることは公序良俗に違反し無効となる可能性があります。
ポイント⑤
通算契約期間のカウントにあたって、有期労働契約とその次の有期労働契約期間の間に、同一の使用者の下で働いていない空白期間(ク-リング期間)が6ヶ月以上あるときは、その空白期間より前の有期契約は5年のカウントに通算されずリセットされます。(つまりク-リングされます)。
ポイント⑥
通算契約期間のカウントを始めるのは、法施行日以後に契約期間の初日が来る有期労働契約からです。そのため、施行日前の日が初日である有期労働契約は通算期間に参入しないことになります。
ポイント⑦
無期転換後の労働条件は、労働契約、就業規則、個々の労働契約によって別段の定めがない限り、従前と同一の労働条件になります。別段の定めをする場合、職務内容が変わらないのに労働条件を従前より低下させることは望ましくないと通達されています。
体制の整備が重要なのはポイントの⑦の無期転換後の労働条件についてだと個人的には思います。その企業の契約社員の位置づけ、無期転換後の位置づけをはっきりさせた上で労働条件を就業規則、規程、雇用契約書に明記し、社内の転換ル-ルをはっきりさせておく必要があります。そのことによって未然に後々のトラブルを防ぐことができるのです。
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