税務・会計情報

改正・高年齢者雇用安定法

 第8回目は「社会保険労務士 大城雄大」が担当致します。これから3回にわたって相次いで改正された労働法を取り上げたいと思います。
 今回は、8月29日に参院で可決・成立しました高年齢者雇用安定法です。この法改正は今後、若年層の昇給抑制、新規採用の抑制につながるであろうと考えますが、現在の年金制度では止むを得ないのかもしれません。
 なぜなら男性(昭和36年4月1日以降生まれ)女性(昭和41年4月2日以降生まれ)の方については、年金の受給開始年齢が65歳からになるからです。年金制度の綻びまで世代間扶養とはなんともお粗末な話です。ついに衆議院が解散しました。次の政権には社会保障と税の一体改革について真摯に取り組んで頂きたいものです。

 施行は来年の25年4月からの予定です。ポイントは概ね次のようになります。

1.継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
 つまり希望者は全員定年後再雇用し、65歳まで雇用しなければならなくなるということです。これまでのように労使協定で勤務評価や出勤率などの基準を定めておいて再雇用したい人を選ぶということが今後はできなくなります。
 ただし、基準の廃止にあたっては経過措置があります。労使協定によって継続雇用の対象となる基準を定めている場合には、以下の範囲において段階的にその基準が適用されるこのなります。

 ①平成25年4月1日~28年3月31日 61歳以上
 ②平成28年4月1日~31年3月31日 62歳以上
 ③平成31年4月1日~34年3月31日 63歳以上
 ④平成34年4月1日~37年3月31日 64歳以上

 実質的には65歳までの全員雇用が完全義務化されるのは平成37年4月以降ということになります。また、継続雇用の例外(心身の健康状態の不調など)については今後指針が定められることになっています。
 
2.継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大
 現行では継続雇用として雇用される会社は定年を迎えた会社および子会社となっていましたが、今後は企業の負担を考慮し、グル-プ企業まで範囲が拡大されることになります。
(グル-プ企業は「特殊関係事業主」といいます。「当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係にある事業主として厚生労働省令で定める事業主」のことです。例えば親会社の別の子会社など)

3.義務違反の企業に対する公表規程の導入
 基本的に高年齢者雇用確保措置の違反企業については罰則というものはなく、これまでは違反企業に対しては助言、指導、勧告止まりでした。ですからはっきりいえば現実には違反企業だらけ、適法に制度を運用していた会社はバカを見たという状況が少なからずありました。
 今後は勧告に従わない場合には、制度上は企業名公表もあり得ることになります。(罰則という位置付ではありませんが)。現実にはどの程度の運用になるかは不明ですが、おそらく余ほどの悪質な違反行為やひどい対応がなければなかなか公表までいく事はないように思います。

 来年の4月法施行にむけて各企業の人件費負担増に係る対応や、就業規則の改定、賃金体系・人事制度の整備等が急がれるところです。

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