税務・会計情報

消費税軽減税率の導入

 所得税の確定申告時期となり、お久しぶりのご挨拶がてら消費税の話題になります。
 現時点で分かっていることをご報告申し上げます。

 平成29年4月1日から,消費税率10%への引上げとともに飲食料品の譲渡には8%が適用される軽減税率の導入が28年度税制改正大綱に盛り込まれました。

 飲食料品といっても飲食用だけでなく,化粧品や医薬品などといった飲食料品以外の物品の原材料として使われることもあります。仕入れ側の使用の目的は関係なく,あくまでも売り手がその物品を飲食料品として譲渡したものであれば軽減税率の対象となり,売り手は課税売上を8%で計上し,仕入れ側は8%で課税仕入れを計上することになるでしょう。

【食品表示法に規定する「食品」が軽減税率の対象 】
 平成28年度税制改正大綱では,消費税の軽減税率の対象は「飲食料品」の譲渡とし,この飲食料品は食品表示法の「食品」をいうとしています(酒税法に規定する酒類を除く)。食品表示法で食品は,「全ての飲食物」をいい,この飲食物の範囲からは医薬品,医薬部外品及び再生医療等製品が除かれる一方,添加物が含まれるとされています(食品表示法2条1項)。
 食品表示法の食品 …「全ての飲食物(医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品,医薬部外品及び再生医療等製品を除き,食品衛生法に規定する添加物を含む)」
 食品衛生法の添加物 …「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で,食品に添加,混和,浸潤その他の方法によって使用する物」
 食品衛生法の天然香料 …「動植物から得られた物又はその混合物で,食品の着香の目的で使用される添加物」

【パッケージングなど販売形態等からみて「食品」の譲渡か否か】
 仕入れた物品が軽減税率の対象となるかは,あくまでも食品表示法にいう食品が譲渡されたものか否かによります。これは,仕入れ側がどういった目的で仕入れたかなどは関係なく,売り手における商品のパッケージングなど販売形態等で総合的に考えます。
 例えば,食品用としても使われる添加物を化粧品用,医薬品用などとしてパッケージングしメーカーに販売しているような場合,売り手側は食品表示法にいう食品以外のものを販売しているものとして,標準税率10%で課税売上を計上すると考えられます。仕入れ側にとっては,通常は請求書に記載されることになる税率で課税仕入れを計上するといった認識でよいでしょう。
 なお,食品などを海外の業者から輸入する場合,厚生労働大臣に届出をする必要がありますが,その届出をしているものであれば,軽減税率の対象として8%分の消費税を納めることになるでしょう。
 消費税の軽減税率の対象となる“一体商品”(飲食料品と飲食料品以外の資産で構成される一の資産)は,一定金額以下の少額資産(1万円以下が想定)で,主たる部分が飲食料品で構成されるものに限られます。一定金額以下か否かは,一体商品の取引対価(売価)で判定するようです。

【一体商品の販売ごとに売価で判定 】
 高級重箱付きおせちなどの「一体商品」は軽減税率の対象になりません。ただ,「一定金額以下」で「主たる部分が飲食料品」,これら2つの要件を満たす場合は飲食料品としてそのすべてが軽減税率の対象となる。あくまでその両方の要件を満たす場合に限られる。
「一定金額以下」の要件を満たすか否かは,相手方に一体商品を販売する際の取引対価(売価)で判定するようです。一定金額を1万円とすると,スーパーが一体商品を定価の1万2,000円で消費者に販売した場合,この要件を満たさないことになり,軽減税率の対象とならず税率10%が適用されます。
 一方,通常は定価1万2,000円で販売されている一体商品でも,セールによる値引き等で売価が8,000円になる場合は,売価8,000円でこの要件を充足するか判定することになるようです。そのため,この要件を満たすことになり,「主たる部分が飲食料品」の要件も満たしていれば,軽減税率の対象として税率8%が適用されることになるでしょう。
 つまり,同一商品で定価が同じものであっても,この要件を充足するかは売価によってその都度変わるものと考えられる。

【主たる部分の判定は原価等の合理的基準による 】
 「主たる部分が飲食料品」の要件を満たすか否かについては,一体商品のうち飲食料品が占める原価などの割合といった合理的な基準によって判定することになるようです。例えば,一体商品を構成する各資産を一つの商品として販売しているような場合であれば,それぞれ資産の売価を把握できるため,各資産の売価の割合で判定することも合理的といえるケースも考えられるのです。要は消費税の税率を考えるうえで,合理的といえるかによるわけです。
 なお,平成28年度税制改正法案では,いわゆるケータリング等が軽減税率の対象外になる一方で,老人ホーム等で提供される食事は対象になることなどが示されています(改正法案附則34)。

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