続・マイナンバ-制度について
「マイナンバ-制度」について前回はメリットを、今回はデメリットのお話をしたいと思います。日本年金機構の個人情報流出が大きな問題に発展しています。デメリットとしては個人情報の流出懸念がよく挙げられます。
マイナンバ-制度は当初は行政機関のみでの利用となりますが、徐々に民間の取引でも活用が拡大されます。金融業界でも銀行・証券会社などは猶予があります。しかし、やがては「マイナンバ-を提示しないと取引しない」という方向です。徐々に日本国内の金融機関に預け入れている資産額は国に正確に捕捉されるようになるでしょう。
現在は税金や給付金、社会保険料の計算は所得ベ-スで行われており、資産額は考慮されていません。正確な資産の補足ができないからです。例えば1億円の金融資産があっても、給与、・事業等の所得がない限りは「低所得者」となり、保護すべき弱者と認定され、低所得者向けの給付金が支給されたり、社会保険料の負担が小さかったりします。
しかし、マイナンバ-制度の導入後は、資産も考慮に入れることになる可能性があります。また、扶養控除を重複して適用する不正や、財産を隠して生活保護を受給することが難しくなる方向です。
メリットのような内容ですが、実は最大のデメリットで恐ろしいのは、国民の国内財産が正確に把握され、金融所得の課税が一体化し、総合課税が導入される可能性があるということです。現在は銀行預金・債権等の利息・株式・投資信託・FX等の利益にかかる税率は、基本的には分離課税で20.42%です。いくら稼いでも一律です。究極にフラットでシンプルな税制になっています。
他方、給与・不動産・事業などの所得は累進課税となっており、所得が増えれば増えるほど税率が上がります。例えば、所得金額が1,800万円超ですと、約50%(住民税約10%)以上という恐ろしい税率となっています。株式投資で例えれば3,000万円を得た場合は、税金は復興特別所得税を合わせて約612万円だけであり、1億円でも税金は約2,042万円です。
しかし、給与等の総合課税の対象となる所得ですと、3,000万円の所得で所得税・住民税は合計で約1,200万円強、1億円ですと5,000万円前後です。強烈な重税です。
マイナンバ-で金融資産・金融所得が正確に把握できるようになると、金融所得も総合課税になる可能性があります。フランスでは株式譲渡益は総合課税となっており、税率は21~60.5%です。アメリカは連邦税は3段階の課税で、州、地方政府税は総合課税です。日本のフラットな20.42%の分離課税は、資産運用で多額の収益を上げる人にとっては天国のようなシステムです。
また、金融所得の一体課税にとどまらず、資産課税も導入も想像できます。例えば金融資産の1%とか3%などに課税するといった税制です。政府の諮問会議民間議員などを務めた伊藤元重・東京大学大学院教授は、「日本では所得に比べて金融資産が増えているので、将来の財政問題を考えると、所得ではなく、資産に課税するという方法がある」と述べています。資産残高への課税(財産税)を導入すると資産逃避の懸念があるので、さすがにハ-ドルは高いと思いますが、政府の諮問会議民間議員の東大教授がこのような発言をしていることが気にかかります。
いずれにしても、「マイナンバ-制度」がスケジュ-ル通り導入されるかどうか今後の政府の対応に注視していかなければなりません。