相続時精算課税制度の選択
法人実効税率が平成27年度から段階的に引き下げられ、数年間で20%台にする方針であることは、すでにご案内のとおりですが、この税収減に対応するため、中小企業に対する優遇を減少させる検討がなされているようです。時期は未定ながら、中小企業の軽減税率の縮小もしくは廃止、外形標準課税の導入等黒字法人のみならず、赤字法人への課税も視野に入れられます。中小企業の赤字法人の割合は約7割とも言われておりますから影響は必至ですが、課税のすそ野を広げることは当然の方向と言えるのかもしません。
平成27年1月より相続税が改正され、その課税のすそ野が広がることになっていますが、それに対応するためか、最近、生前贈与の相談をよく受けるようになりました。従来より関心があった方たちだけでなく、改正を見据えての方たちが多いように思われます。生前贈与を行う際の手続きは「相続時精算課税制度」を利用して行われることが多くなります。
【相続時精算課税制度の概要】
贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。
【適用対象者】
贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子(子が亡くなっているときには20歳以上の孫を含みます。)とされています(年齢は贈与の年の1月1日現在のもの)。
(平成27年より、贈与者は60歳以上の親もしくは祖父母、受贈者は推定相続人である20歳以上の子もしくは孫に拡大されます。)
【贈与税の計算】
特例の選択をした贈与者からの贈与
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、その贈与者から1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。
特例の選択をしていない贈与者からの贈与
相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税額を計算します。
【適用手続】
相続時精算課税を選択しようとする受贈者は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出することとされています。
【留意点】
最後に、相続時精算課税制度の利用を検討される場合以下の点にご留意ください。
① 贈与時に非課税となるだけで、相続時には課税される課税の繰延制度です。
② 不動産取得税及び登録免許税は、所有権移転の原因が「贈与」として課税されます。
③ 贈与財産の評価は贈与時に行うため、財産の値上がりもしくは値下がり時には、結果として有利不利が生まれます。
すべての納税者にとってもしくはすべての選択が、必ずしも有利になるわけではありませんが、将来相続税がかからないだろう方にとっては、早い段階で若い世代に財産を移せます。また、収益物件が対象財産の場合には、評価の問題等はありますが、発生する収益自体を受贈者が享受することができますので、場合によっては非常に有効な制度だと思います。
【関連リンク】 相続時精算課税制度はこちら