老人ホーム等への入居
厚生労働省が平成25年7月に発表した日本人の平均寿命は、男性が79.94歳、女性が86.41歳とのことです。医療の発達等により年々長生きする人たちが増加し、その生活スタイルも多様化してきています。当然、少子化、核家族化の影響もあり、いわゆる老人ホーム等に入居する老人の数もここ数年増え続けています。
このような事情も影響してか、平成26年1月以降発生の相続又は遺贈において、被相続人の居住用宅地の評価が改正されることになっております。
一般的に、被相続人が居住していた建物の敷地を、一定の要件を満たす親族が相続又は遺贈により取得した場合には、その敷地のうち240㎡まではその敷地の相続税評価額が80%減額されることになっております。
ここで、被相続人が老人ホーム等に入所した場合、相続開始直前において「被相続人の居住の用」に供されていた宅地等に該当するのか否かがポイントです。
改正前
被相続人が、居住していた建物を離れ老人ホーム等に入所したような場合、一般的には、それに伴い被相続人の生活の拠点も移転したものと考えられるため、80%の減額を受けることができません。
但し、介護等を受ける必要性から老人ホーム等に入所しているものの、自宅での生活を望んでいるため、いつでも居住できるように自宅が維持管理されているケースもあり、そのような場合には、病気治療のための入院と同一状況であると考えられることから、次に掲げる状況が客観的に認められる場合には、相続開始の直前においても被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものと考えられています。
1 被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することになったものと認められること。
2 被相続人がいつでも生活ができるようその建物の維持管理が行われていたこと。
3 入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。
4 その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。
改正後
改正後は、改正前4つの客観的状況うち、下記の2つの客観的状況でその該当の可否が判断されることになりました。
1 要介護認定等を受けていた被相続人が介護が必要なため入所したものであること。
2 当該宅地が貸付け等居住の用以外の用途に供されていないこと。
今まで小規模宅地等の特例の適用を受けるため、所有権又は終身利用権の取得にあたる老人ホームの入所をためらうケースもあったようです。税制が、経済活動を阻害することは極力避けることが望ましいと考えられる中で、今回の改正は、高齢者の多様な生活設計に意味のあるものと言えるのではないでしょうか。
なお、当該居住用宅地に係る小規模宅地の特例の対象面積は、平成27年1月以降330㎡に拡充される予定です。